江戸時代から現代へと受け継がれるストーリー。あたたかい明るさで人の「心」に寄り添う、北限の御茶処《 九重園 》

歴史的なストーリー、目に見えない「人の心」の大切さ

――本日は、よろしくお願いいたします!まず、お店の歴史やコンセプト、九重園ならではの魅力を教えてください。

瀧波 九重園のコンセプト・九重園ならではの魅力は、江戸時代から続く『ストーリー』にあります。今から220年ほど前、江戸時代後期(1700年代中期頃)に、初代瀧波重兵衛は茶業を営んでいました。そして二代目重兵衛の時、村上藩主・内藤信親公に命じられ、村上藩のお茶を作り始めました。お茶の道をさらに極めるために、二代目重兵衛が宇治に出かけ「誰か教えてください」とお願いして、柳田九兵衛さんという方に来てもらったんです。その九兵衛さんに重兵衛が習ったから、二人の頭文字「九」と「重」をとって、【九重園】という名前になったのです。このように、村上藩に仕えてお茶を作っていたこと、その過程でのストーリーが九重園が持っている大きな魅力だと思います。

そして現代に至る。歴史的なストーリーって大事だと思うんですけど、そのストーリーがある中で、これからどういうふうにやっていこうかな、ということですよね。村上茶もさることながら、村上市も非常に歴史がありますので、村上という町をバックボーンに、村上市をアピールできるお茶屋であり続けたいなと考えております。

村上を訪れてくれて、九重園に寄ってみて、非常に良かったと思っていただけるように積み重ねていきたいと思います。


――長い歴史を現代に残していくということは、とても大変ですよね。

瀧波 ストーリーもそうですし、ご先祖様が残してくださった建物、お人形さま、調度品。そういうものがあって、総合的に九重園が成り立っていると思います。先祖代々受け継がれてきた大切なもの、それからこの建物。それらを活用させてもらって、今の九重園があると思います。

今もなお、当時の建物が残っているのは、町の人々がずっと火事を出さないように暮らしてくれたからですよね。小さい火事はいくつかあり、九重園に火の手が来た時、壊そうとしたこともあったそうです。


――昔は周りの建物を壊して、火を止めていましたからね。

瀧波 壊さなきゃ、というところまでいって、柱にのこぎりをいれそうになったんですけど、寸でのところで火の手が止まった、ということがあったそうです。不思議な力で守られていますよね。目には見えない様々な思いに、私たちは生かされている、ということを感じました。


――九重園さんの歴史的なストーリーに、素敵なドラマを感じました。次に、村上茶の歴史や特徴を教えてください。

瀧波 「お茶は南方の嘉木(かぼく)」と言って、南の地方のものなんです。南の喜ばしい木ですよね。村上町大年寄役 徳光屋覚左衛門が伊勢から茶の実を持ち帰り、それを植えたのが始まりと言われています。だから村上茶の歴史って、400年と言われているんですが、それはお茶の種を植えてから400年なんです。その後、私たちがお茶屋として成り立ったのは250年、260年くらいですね。

特に村上茶は、もともと茶色いお茶なんです。お茶って茶色の茶って書くでしょう?茶色いお茶だったんです。どうしてかと言うと、抹茶や、緑色のお茶の作り方を、昔は知らなかったから。ほうっておくと発酵が始まって、ウーロン茶みたいな茶色いお茶を、町人は飲んでいたんですね。

九重園に村上茶100%というお茶がありますが、こちらは自然な山茶のようなお茶となっています。農作物ですから毎年出来が違う、自然な味のお茶ですね。


――村上茶は自然そのままの味わいなんですね。九重園のおすすめ商品を教えてください。

瀧波 九重園と言えばこのお茶だよというのが、独自のブレンド技術によって作られたお茶です。それを楽しんでいただきたいな、と。ブレンドをすることによって、毎年の出来具合に左右されない安定した味を提供することができています。

その中でも【舞鶴】という煎茶があるのですが、村上のお城 ”舞鶴城”、その城の名前をお茶の名前につけてよいと許されたのが【舞鶴】です。

それともう一つは、九重園という名前の由来が、先ほど九重園の歴史でお話しをした「柳田九兵衛さんに2代目重兵衛が教わって、その頭文字をとった」というものなのですが、「重兵衛」は世襲していきますので、いま私が9代目重兵衛なんです。そんなストーリーが受け継がれる「九重」の名が入っているお茶が【特上九重】。ぜひお試しいただきたい、私も大好きなお茶です。

――【舞鶴】と【特上九重】。九重園さんのストーリーが込められた特別なお茶ですね。最後に、今後のビジョンを教えてください。

瀧波 今だからこそ伝えたいのですが、現在、ロシアがウクライナに侵攻していますよね。そんな状況下で、世界は非常に不安定になっています。観光という産業は『平和産業』なんです。平和でなければあり得ない。それから、お茶を楽しむということもそうですが、生活を楽しむということも、平和でなければあり得ないことです。

私たちができることは、目に見えない「心」を大切にするということ。お客様の心に寄り添い、私たち一人ひとりが自分の心を大切にして、あたたかく”もてなす”ということを、九重園の最も大切な柱としてやっていきたいと思っているんです。村上市は観光都市ですから、コロナで大変な状態ではありますけど、観光に来ていただいたお客様一人ひとりを大切にして、接客していきたいと思っています。

これからのお茶づくりに関しては、次代を担う息子に託したいと思っているのですが、私自身は畑も丁寧にやらなきゃいけないと思っているので、除草剤など使わずに、自分たちの手で草取りをやっていきたいと思っています。お茶づくりも大切ですし、来てくださるお客様一人ひとりに「村上に来てよかった。」と思ってもらえるようなおもてなしを、常に心掛けていきたいと思っています。


――人生の中で、村上に一回来るか来ないかという人もきっといますよね。コロナなどの影響で、さらに観光する機会が減ってしまっていますし。

瀧波 もちろん、コロナ流行の前から、来てくださって当たり前とは思っていません。村上には素晴らしいお店がたくさんあるんです。観光客が飽きることはないと思うんです、自然も豊かですし。その中で九重園に来てくださっているのは、本当に一期一会の出会いですし、その貴重な出会いをおろそかにしてはいけないと思っています。観光客の方が訪れてくださったとき、「なーんだ」と思わせるような、つまらない時間を過ごしたなとか、普通の店と変わりないねというような思いは感じてほしくないと思っています。それはすべてのスタッフと意識を共有しています。人の心を大切にするとはどういうことか。売って当たり前とか、売るための店とは考えていないんです。


――商品自体も大切にするけれど、一番はお客様への気持ち。お客様にどう思ってもらえるかを大切にしているのですね。

瀧波 お客様にどのように過ごしていただけるか。せっかく村上にいらしていただいたのだから、「また行きたいね」って思ってもらいたい。それがうちに来るだけの目的ではなくて、あそこ行ってここ行ってこれを食べて、この場所であんな風に過ごして、そして温泉だよねって、その一助になりたいという思いですね。商売っていろんなお店があってはじめて成り立つので、町全体でいろんなお店が繁盛することが一番なんです。


――村上市全体が盛り上がっていってほしいですね。

瀧波 そうですね。


希望と明るさに満ちた子どもたちの作品

――次に、カレイドスクエアパークとの関わりについてお話しをうかがいたいのですが、カレイドを知ったきっかけについて教えていただけますか?

瀧波 カレイドの職員さんが店に2度、お客様として来てくださって、2度目のときにお茶を飲みながらカレイドの活動についてお話しをしてくれたのがはじまりです。何かご協力いただけないか、と。たまたま2回とも、私が接客していたんです。私自身の人生もいろいろあったので、がんばっている方のお話しに共感を覚えます。それで、私もぜひ応援したい、と思いました。

子どもたちに仕事をもらえないかと言われて、箱折りだったらできるかしらと提案しました。折り方を教えてもらえればできます、とのことでしたので、それならばぜひ!とお願いしたんです。それでカレイドへ行ってみたら、子どもたちがかわいいし、純粋だし、来て楽しかったなぁって。こんな元気でヤンチャな子どもたちがいるの、という新鮮な思いでしたね。それがきっかけです。

それから羽田先生が来てくださって、そうしたら羽田先生や他の職員さんたちが若くて!子どもたちのために、こんなに若い人たちが頑張っているんだって、2度目の驚きでした。若い人が、社会的に弱い立場にいる人のために頑張っているということに、とても感銘を受けましたね。若い人は、自分の夢にまっしぐらというイメージがあったので。今思うと、職員さんたちにとっては、その自分の夢がカレイドでの活動なんですよね。

子どもたちにいろんな経験をさせて、そのアイデアは先生方の発案だと思うんですよ。チャンスを与えて、そして作品をつくって、作品をつくるだけではなくて販売しようとか、先生方の想像力が、3度目の驚きでした。カレイドってどんどん進化していくんだなって!常に刺激と感動を与えてくれるんですよね。この私でも役に立てることがあるなら、やらせていただきたいなって思わせるところなんですよ、カレイドさんは。

子どもたちと触れ合えて、子どもたちの才能を生かして、そして私たちのような商店を巻き込んで動かすその情熱が、すごいなって思うんです。


――ありがとうございます!九重園さんのように、協力してくれるところがあってこそなので、本当にありがたいです。箱折りの作業だけでなく、お茶のラベルにも子どもたちの作品を起用していただいて。

瀧波 カレイドさんからラベル起用のご提案をいただいたのですが、子どもたちの作品を見たとき、すごいなって。驚きましたね。作品がすべてにおいて明るくて、希望に満ちているんですよ。私もいろんな経験をして、いろんな作品を見てきましたが、カレイドさんのは太陽のような明るさを持っていて、大好きなんです。カレイドの子どもたちは、なんでこんなにも希望に満ちた、明るい作品をつくれるんだろうと思っていたんですが、それは一人ひとりのモチベーションだったり、先生方が子どもたちに寄り添ってきた結果なのではないかな、と感じています。

九重園の職員も、明るい人ばかりなんですよ。明るいって大事なこと。でも実は暗さの方が、ものすごく周りに影響を及ぼして、どんどん伝染していくんです。暗さほどの強さはなくとも、柔らかい明るさは『光』となって、闇の中でも一筋の光を差し込むことができる、そんな明るさって大事なんですよね。だから意識して明るさは持っていなければいけないって思うんです。


――子どもたちの明るさを感じ取っていただき、たくさんの方に作品を見てもらえる機会をいただけて、本当にありがたいです。箱折りなど、子どもたちがおこなう作業をいただいていますが、実際に作業提供をしてみていかがでしたか?

瀧波 丁寧に箱折りをしていただいて、感謝しています。私がお店をまかせて外へ出られるようになったら、子どもたちと一緒に畑へ行きたいな、など色々考えています。子どもたちともっと様々な形で関わり合ったり、支援の手助けができたらと思っています。箱折りやラベル貼りも、引き続きどんどんお願いしたいです!


――お忙しい中、子どもたちのためにと考えていただいて、本当にありがとうございます。本日は、貴重なお時間をいただき、ありがとうございました!


九重園村上本店

HP:https://www.kokonoen.com/

住所:新潟県村上市小国町3番16号

営業時間:AM8:30〜PM5:30 (1月1日はお休み)駐車場 10台

※ 店内には町屋造りのお部屋でお抹茶などをいただける町屋 Cafe 九兵衛庵(AM 9:00 から PM 4:30)もございます。



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